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亀山市能褒野町 内科、外科、脳神経外科、リハビリテーション科

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認知症を遠ざける「脳の守り方」

~最新の研究データが教える、今日からできる4つの習慣~

「親が認知症だったから、自分も将来そうなるのではないか」 「最近、名前が出てこなくて不安だ」

外来では、こうした切実な不安を耳にすることが増えました。 確かに、認知症には遺伝的な要因も関わっています。しかし、近年の国内外の多くの研究が、ある一つの希望ある事実を指し示しています。

それは、「遺伝子以上に、毎日の生活習慣が脳の寿命を左右する」ということです。

世界的な医学誌『The Lancet』の委員会による報告では、認知症の約40%は、生活習慣の改善によって予防や発症遅延が可能であると推計されています[1]。 今回は、膨大な医学論文の中から、私たち日本人が特に意識したい「脳を守る(防御因子)」と「気をつけるべき(リスク因子)」ポイントを厳選してお伝えします。


1. 【食事】日本人の脳を守る「緑茶」の力

食事に関しては様々な説がありますが、私たち日本人にとって最も手軽で、かつ科学的根拠が蓄積されているのが「緑茶」です。

日本の複数の大規模な追跡調査において、「緑茶を習慣的に飲む人は、認知機能の低下リスクが低い」という結果が報告されています[2]

  • 目安は1日4杯以上:ある研究では、1日に4杯以上飲むグループでリスクが大きく低下しました。
  • カテキンの抗酸化作用:緑茶に含まれるカテキンやテアニンといった成分が、脳の神経細胞を酸化や炎症から守っていると考えられています。

コーヒーにも一定の予防効果が報告されていますが、リラックス効果や日本人の体質を考えると、緑茶は非常に優れた「脳のパートナー」と言えます。

【今日からできること】 ペットボトルも良いですが、できれば急須で淹れた温かいお茶を、食事や休憩の合間にこまめに飲む習慣をつけましょう。


2. 【運動】「わざわざ運動」しなくても大丈夫

「運動不足は脳に悪い」とわかっていても、スポーツジムに通うのはハードルが高いものです。しかし、最新の研究は、私たちの背中を押してくれる結果を示しています。

重要なのは「激しいスポーツ」ではなく、「身体活動量(生活の中でどれだけ動いているか)」です。

  • 家事(掃除、料理、洗濯)
  • 庭仕事や農作業
  • 買い物への徒歩移動
  • 階段の上り下り

これらすべての活動が、脳の血流を維持し、神経細胞を刺激することがわかっています[3]。逆に、最も脳に良くないのは「一日中座ったまま過ごすこと」です。

【今日からできること】 「今日は運動できなかった」と落ち込む必要はありません。「掃除機をかけたから脳に良いことをした」「階段を使ったから脳が活性化した」と、日常の動作をポジティブに捉えてみてください。


3. 【睡眠】「7時間」が黄金バランス

睡眠は、脳の中に溜まった老廃物(アミロイドベータなど)を洗い流す「脳の掃除時間」です。しかし、近年の研究では「とにかく寝ればいい」というわけではないことがわかってきました。

睡眠時間は「U字型」のリスクを描きます。つまり、短すぎても(5時間未満など)、長すぎても(9時間以上など)、認知症のリスクが高まる傾向があるのです[4]

特に高齢の方で注意が必要なのが、「長すぎる布団の中での滞在」です。 やることがないからといって、夕食後すぐに布団に入り、朝まで10時間以上横になっていると、睡眠の質が浅くなり、生活リズムが崩れ、かえって脳の老化を早める可能性があります。

【今日からできること】 理想は7時間前後です。メリハリのある生活を心がけ、日中はなるべく体を起こして過ごしましょう。「昼間しっかり動いて、夜ぐっすり」が脳を守る鉄則です。


4. 【社会】「耳の聞こえ」と「人との交流」

意外に見落とされがちですが、世界的に最も注目されているリスク因子の一つが「難聴(聴力低下)」です[1]

耳が遠くなると、脳に入ってくる情報量が激減します。すると、会話がおっくうになり、人との交流を避けるようになり、結果として脳への刺激が失われ、認知機能の低下が加速します。これは「社会的孤立」とも深く関係しています。

【今日からできること】

  • 「最近、テレビの音が大きいと言われる」「会話が聞き取りにくい」と感じたら、早めに耳鼻科を受診しましょう。
  • 補聴器を適切に使うことは、恥ずかしいことではなく、最先端の「脳の保護活動」です。
  • 家族や友人とおしゃべりをする、地域の集まりに顔を出すなど、社会とのつながりを保つことも立派な薬になります。

まとめ:完璧を目指さず、できることから

認知症の予防には、何か一つの特効薬があるわけではありません。 しかし、ここまでご紹介したように、高価なサプリメントや特別な機械がなくても、日々の生活の中でリスクを減らすことは十分に可能です。

  1. お茶を飲み、
  2. 家事や用事でこまめに動き、
  3. 人とおしゃべりをして、
  4. 夜は7時間ほどぐっすり眠る。

これらは、昔ながらの日本の健康的な生活そのものです。 「遺伝だから仕方ない」と諦める必要はありません。今の生活習慣の積み重ねが、5年後、10年後のあなたの脳を守ります。

もし、「もの忘れが気になる」「生活習慣を見直したいけれど、何から始めればいいかわからない」という場合は、お気軽に診察室でご相談ください。 現在の体の状態に合わせて、無理なく続けられるプランを一緒に考えましょう。


参考文献・医学的根拠

本コラムは、以下のガイドラインおよび学術論文の知見に基づき構成しています。

[1] 認知症予防に関する包括的報告(世界的な指針) Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. The Lancet. 2020;396(10248):413-446. (※世界五大医学雑誌の一つ『Lancet』による、認知症の約40%は修正可能なリスク因子(難聴、高血圧、社会的孤立など)によるとする報告)

[2] 緑茶摂取と認知機能に関する国内研究 Tomata Y, et al. Green tea consumption and the risk of incident functional disability in elderly Japanese: the Ohsaki Cohort 2006 Study. Am J Clin Nutr. 2012;95(3):732-9. (※日本人の生活習慣に基づき、緑茶摂取量と機能障害リスクの低下を示した代表的な研究)

[3] 身体活動と認知症リスク World Health Organization (WHO). Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019. (※WHOによるガイドライン。運動習慣および日常的な身体活動の推奨について)

[4] 睡眠時間と認知機能の関連 Kitamura K, et al. Association between sleep duration and incident dementia in elderly Japanese. Sleep Med. 2020;75:170-176. (※日本人高齢者を対象とした調査で、短時間睡眠だけでなく長時間睡眠もリスクとなりうることを示した研究など)

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