いびきが大きい、日中に強い眠気がある、朝すっきり起きられない――。
こうした症状に心当たりがある方は、もしかすると「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」の可能性があります。
睡眠中に呼吸が止まるこの病気は、本人が自覚しにくい一方で、放置すると命に関わる疾患につながることもある“隠れた現代病”です。
■ 睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群は、**眠っている間に呼吸が断続的に止まる(10秒以上の無呼吸が繰り返される)**病気です。
医学的には、以下のように定義されます:
- 無呼吸(10秒以上の呼吸停止)
- 低呼吸(呼吸が著しく弱くなる)
- これらが1時間あたり5回以上出現する場合、SASと診断されます。
睡眠の質が著しく低下することで、深い睡眠がとれず、日中の眠気・集中力の低下・倦怠感・頭痛・抑うつ症状などさまざまな不調が生じます。
■ よくある症状と周囲からの指摘
睡眠時無呼吸症候群の方によくみられる症状は次の通りです:
- いびきが大きい(途中で止まる)
- 寝汗をかく
- 朝起きたときに頭が重い・だるい
- 昼間に強い眠気に襲われる(運転中なども)
- 記憶力や集中力の低下
- 夜中に何度も目が覚める(トイレに起きる)
特に多いのが、「配偶者にいびきと無呼吸を指摘されて受診した」というケースです。本人が気づきにくいため、ご家族の観察が診断のきっかけとなることも珍しくありません。
■ 放置すると怖い合併症も
SASは、単なるいびきの問題ではありません。慢性的な低酸素状態と自律神経の乱れが、全身の病気を引き起こすリスクを高めます。
代表的な合併症には以下のようなものがあります:
- 高血圧
- 心不全・心筋梗塞・不整脈
- 脳卒中
- 糖尿病
- うつ病や認知機能の低下
- 交通事故(運転中の居眠り)
特に、高血圧や糖尿病の治療をしていてもなかなかコントロールがつかない方は、隠れSASが原因であることも少なくありません。
■ 診断と検査方法
当院では、**自宅でできる簡易検査(携帯型終夜睡眠ポリグラフ)**を導入しています。就寝前に機器を装着していただき、一晩の呼吸・血中酸素濃度・心拍などを記録します。
その結果、無呼吸低呼吸指数(AHI)が一定以上であれば、**精密検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)**を病院などで受けていただくこともあります。
■ 治療法:CPAPと生活習慣の見直し
SASの治療法としてもっとも一般的なのが「CPAP(シーパップ)療法」です。
これは、就寝時に鼻にマスクを装着し、空気を送り続ける装置を使うことで、気道の閉塞を防ぎ、無呼吸を改善する方法です。
多くの患者さんが「ぐっすり眠れるようになった」「昼間の眠気がなくなった」と実感しています。
その他の治療法としては:
- 減量(肥満がある場合)
- 飲酒・喫煙の制限
- 睡眠姿勢の工夫(仰向けを避ける)
- マウスピースの使用(軽症例)
いずれにしても、継続的な治療と生活習慣の見直しがカギとなります。
■ 気になる症状があれば、早めの相談を
「最近いびきがひどくなった」「日中に眠くて仕事に集中できない」
そんな日常の“ちょっとした違和感”が、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
当院では、自宅でできる簡易検査から治療まで、一貫してサポートしています。心配な症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。