生活習慣病を治療する目的は
生活習慣病とは、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、肥満症など、日々の生活習慣の積み重ねによって発症する慢性疾患の総称です。これらの病気は自覚症状がほとんどないまま進行し、放置すると脳卒中や心筋梗塞、腎不全など重篤な合併症を引き起こすことがあります。
私はこれまで多くの脳卒中の治療に携わってきました。治療によって回復される患者さんがいる一方で、後遺症が残ったり命を落とされるケースも少なくありません。救急医療では「起きたことへの対処」が求められますが、外来診療では「病気を未然に防ぐこと」が何より大切だと考えています。生活習慣病の管理を通じて、地域の皆さまの健康維持に貢献していければと思っております。
高血圧症

高血圧症は、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の場合に診断されます。 この状態では、望ましいとされる120/80mmHg未満の血圧の方に比べて、脳卒中や心臓病を発症するリスクが約3倍に高まることがわかっています。 まずは、塩分を控えた食事や適度な運動など、生活習慣の見直しが大切です。しかし、それだけで改善が難しい場合もありますので、早めに医療機関を受診することをおすすめします。 特に160/100mmHgを超えるような高い血圧の場合には、放置せず、できるだけ早く医師に相談してください。

医療機関を受診すると、まずは血圧の測定や生活習慣の聞き取り、血液検査、心電図などを行い、他の病気の有無も含めて総合的に評価します。そのうえで、必要に応じて内服治療が始まります。血圧を下げる薬にはいくつかの種類があり、患者さん一人ひとりの年齢や体質、合併症の有無などに応じて最適な薬が選ばれます。 薬を飲み始めた後も、定期的な受診によって効果や副作用のチェックを行い、必要に応じて薬の調整をしていきます。多くの場合、数ヶ月で安定した血圧を保てるようになります。自己判断で薬を中断せず、医師と相談しながら継続することが大切です。
脂質異常症
脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)のバランスが崩れた状態を指し、特にLDL(悪玉)コレステロールが高い、HDL(善玉)コレステロールが低い、中性脂肪が高い、などの異常がみられます。これらの異常は動脈硬化を進行させ、将来的に心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な疾患のリスクを高めるため、早期の管理が重要です。
治療の基本は、食生活の見直し(脂質や糖質の摂取制限)、適度な運動、禁煙、減量などの生活習慣改善ですが、それでも十分な効果が得られない場合には、スタチン系薬剤などを用いた薬物療法が行われます。定期的な血液検査と継続的な管理が大切です。
糖尿病

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く病気で、主に1型と2型に分類されます。特に生活習慣に関連する2型糖尿病は、食べ過ぎ、運動不足、肥満、遺伝的要因などが関与します。高血糖が続くと、動脈硬化をはじめ、網膜症、腎症、神経障害といった合併症のリスクが高まり、放置すると失明や人工透析が必要になることもあります。

糖尿病の治療は、まず食事療法と運動療法による生活習慣の改善が基本です。食事では糖質やカロリーの管理が重要で、運動は血糖値の安定に効果があります。これらで十分な改善が得られない場合には、内服薬やインスリン注射を併用することになります。状態に応じた治療の継続と定期的な検査により、合併症の予防が可能です。
高尿酸血症
高尿酸血症とは、血液中の尿酸の濃度が基準値(男性7.0mg/dL、女性6.0mg/dL)を超えて高くなる状態です。尿酸はプリン体という物質が体内で分解されてできる老廃物で、通常は腎臓を通じて尿中に排出されますが、排出が不十分だったり、産生が過剰になると体内に蓄積されます。高尿酸血症が続くと、関節に尿酸結晶がたまり、激しい痛みを伴う「痛風発作」を引き起こすことがあります。
治療には、まず食事(プリン体の摂取制限、アルコールの節制)や運動などの生活習慣の改善が基本です。必要に応じて尿酸の生成を抑える薬(アロプリノールなど)や排泄を促す薬(ベンズブロマロンなど)を使用します。継続的な管理が重要です。
